読み物
2025/06/06 11:45
🚩あなたのモヤモヤを、ピースクラフツがゆる〜く解決!工芸をもっと身近に、楽しく感じてもらえるよう、毎月お届けしていきます
こんにちは、クラミです。
今日はちょっと立ち止まって、「そもそも工芸って何?」という問いに向き合ってみたいと思います。
工芸と聞くと、多くの人が「日本の伝統」や「古くから続く手仕事」といったイメージを持っているのではないでしょうか。でも実は、「工芸(こうげい)」という言葉が使われるようになったのは、明治時代に入ってからなんです。
当時、日本では西洋から入ってきた“Art(美術)”や“Craft(手仕事)”といった概念を日本語に訳す必要がありました。その過程で「工芸」という新しい言葉が生まれ、少しずつ定着していったのです。つまり、工芸=昔からあるもの、というイメージとはちょっとズレがあるんですね。
🎨 アートと産業のあいだにあった職人たち
明治時代の職人たちは、ものづくりにおいて「アート」か「産業」かを明確に線引きするような考え方をしていませんでした。美しいものをつくること、実用的なものをつくること、そのどちらもが職人の手間と技に支えられた「心ある手仕事」でした。そしてそれらは、自然と人々の暮らしに溶け込んでいたのです。
つまり、「クラフト」という概念は当時の日本にはなかったけれど、ものづくりに込められた精神は、すでに日々の生活のなかに八百万(やおよろず)の神々のように宿っていたとも言えるかもしれません。
📚 辞書で見る「工芸」って?
つづいて「工芸」という言葉の意味を探ってみましょう。
新明解国語辞典(第四版)では、「工芸」を次のように定義しています。
「〔おもに手工業で〕美術的な製作品をつくること。陶磁器・漆器・織物・染め物など。」
ここで注目したいのが、「手工業」という言葉に含まれる「工業」という語。
工業とは、「商品価値のある生産物を製造する産業」のことを指します。つまり、工芸とは本来、美術や芸術とは異なり、「産業的な生産=実用品の製作」が前提にあるということになります。
さらに混乱を招くのが「工芸品」という言葉。「伝統的な技術や技法を用いて作られる美術品や装飾品のこと」とされており、ここでは“品”が付くだけで、意味がかなり変わってきます。工芸品は、どちらかといえば鑑賞を目的とした芸術的なものを指します。
🌿 工芸って、もっと自由でいい
最近では、「工芸=Kougei」とあえて英訳せずに紹介する展覧会やプロジェクトも増えてきました。
アートなのか、産業なのか、伝統なのか、きっちりと型にはめることが難しいけれど、でも確かに「いいもの」として感じられる。そんな存在に、国内外から注目が集まっているのです。
天然素材を生かし、使う人に寄り添うかたちに仕上げ、そして何より、つくり手の想いを込める。そんなものづくりが、今ふたたび光を放っています。
✨ 最後にまとめ
誰かが、誰かのために、ていねいに手をかけてつくった、美しく、心地よく、素材そのものを感じられるもの。
そこには、日本ならではの自然観や美意識、文化のエッセンスがぎゅっと詰まっています。
「なんだか、これ好きだな」――その直感を大事にしてみてください。そして、実際に使って、触れて、素材を感じる。その瞬間こそが、工芸の本質に出会う一歩になるのだと思います。
むずかしく考える必要はありません。まずは、使ってみること、そして、感じることから始めてみましょう😊
いかがでしたか?
この工芸という言葉問題は、工芸学科の工芸史の授業で一番最初に習います。
何をもってして工芸なのかというのは、今なお永遠の課題なんですよね。。。
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ライター紹介:ピースクラフツのクラミ
東京都板橋区の町工場生まれ。美術大学 漆工芸学科卒業。 20代で古美術店・丁稚奉公を経験し、古伊万里・鍋島に魅了される。 好きをこじらせ、聖地・佐賀県有田町に移住。 2015年から村島昭文氏に轆轤(ろくろ)を師事。有田町で職人としても活動中。
ピースクラフツの職員として、マニアック&楽しい工芸トークを発信していきます!